※文中の『』内の記述は、すべて高橋幸宏氏によるライナー解説文からの引用です。
TECNODON LIVE |
10年ぶりに再生したYMO。4/1エイプリールフールの記者会見 に始まり、アルバム「TECHNODON」を発表、コンサートは東京 ドームで2日間行われた。 この巨大な空間で3人の、しかもMCや動きのないライブは一体 どうなるのか? と思われたが、原田大三郎によるCGアートの大 マルチメディア・ライブであった。演奏と同期して動く映像は、 実はMIDIなどは使わず、映像スタッフがYMOの演奏にあわせてド ラムのごとくMacintoshのスペース・キーを叩いて映像を動かす という、まさに「テクノ」な映像ライブであった。 『このときは心臓止まりそうでした』という演奏は、『レコー ドと同じものを再現しよう』というライブの準備のため、2週間 のリハのうち『(アルバムで)実際に使っている音をだけを抜き 出してどんどん機械にサンプリングしていく』作業に追われ、 『結局練習できたのは4日間ぐらいで、あとはみんな不眠不休』 だったという。 このライブの真価を発揮したのは、ライブ・ビデオ「TECHNO- DON LIVE IN TOKYO DOME」だろう。YMOと映像チームのジョ イント、そしてドーム全体をスクリーンとしたライティング、 そして画像エフェクト処理など、「またYMOにやられた」と感じ たものだ。本当に3人がやりたかった事は、映像を含めたこの作 品なのかもしれない。 |
ステージ・セッティング |
このライブに関しては、セッティング図を省略した。何故かと 言うと、3人のブースにセットされている機材のほかに、あまり にも多数のシンセがマニュピレーターの手によってコントロール されているためである。そこで、文章のみでご了承いただきたい。 坂本龍一は、マスター・キーボードとしてカーツウェルを使用、 メイン・シンセはコルグ01/Wproであった。他にProphet-5や VP-330、そしてマニュピレーターによりローランドJupiter-8、 JD-800などのビンテージ&デジタル・シンセなど、総勢14台の キーボード/音源/サンプラーがコントロールされている。ビン テージにこだわったのではなく、サウンドにこだわった結果、ビ ンテージ・シンセに辿り着いたという。 細野晴臣は、メインにJupiter-8を使用。他にARP Odyssey、 Prophet-5、E-mu PROTEUS、コルグ01/Wproをセッティング。 高橋は、TAMAのドラムARTSTARIIに当時まだ正規に国内に輸 入販売されていなかったクラビアddrumを使用。キーボードはコル グM-1がセッティングされていた。 これらの多数の機材の出力を、ライブ・ミキサーとしてステー ジにあがったゴウ・ホトダがリアルタイムにミキシング&コント ロールを行なった。さながら、今で言うところのグルーヴDJ的な 役割を演じている。 シーケンスは一切テープを使わず、すべて実際にシンセを鳴ら して行われたが、万が一のトラブルに備え、いつでも切り替えら れるように48チャンネルのデジタル・テープを同時に回していた。 |
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「I TRE MERLI」は「三羽からす」という意味。『やっぱりあ のころのYMOの中で、3人で作った曲』であり、『テクノドンの 中でいちばん思い入れがある』という。 アルバム・バージョンよりはかなりアコースティックな演奏で、 『最初メロディーとかサビを作ったときは、モノクロのイメージ でした』というように、黒沢映画を彷彿とさせる雰囲気で、メン バーも「街道モノ」と呼んでいた曲。そういう意味で、表面的な 部分は大きく異なるが、スターウォーズの日本版とも言うべき時 代劇の戦闘シーンをイメージした『ライディーンの続編のつもり で作った曲』という。 この東京ドーム公演で『実はもめたんですよ、ライディーンを やるかどうか』というのも面白い。『細野さんも最後まで迷って たけど、最終的にはあまりサービスしない方向でやることになり ました』という。 アルバム「テクノドン」は海外でも発売され、海外ツアーまで 計画されたが、目を覚したテクノの怪獣は、残念ながら2日間東 京ドームに姿を表した後、再び姿を消した。 |